私は現在、グランと荷馬車の中にいる。
 荷馬車は今、セセラギの村を出てフェルミゴの町へ向かっていた。
 あれから集会は始まったものの依頼人の行商人が戻って来てしまい何も聞けなかった。

 いったい何をしようとしているの?

 グランの言ったことが脳裏に浮かび不安になる。

 もし本当に反乱を起こそうとしているなら止めたい。でも……どうやって止めるの?
 恐らくグランに言えば、なんらかのアドバイス……手伝ってくれると思う。だけど、それだと私の素性が知られてしまうわ。

 そう思いながら私はグランをみた。

 ★♡★♡★

 さっきからメルナは何を考えてるんだ? オレの方を向いたり、アッチコッチみている。
 もしかして村の広場にいたティオベルジェのことを考えていたのか。
 まさかと思うが……恋人ってことはないよな? だが隠れたってことは会いたくないってことだし……あり得ないことじゃない。

 そう考えながらオレはメルナへ視線を向ける。
 メルナと目が合った。だが……なぜかメルナは目を逸らす。

 オレ……何かしたか?

 そう思い考えるも何も浮かばない。

 考えても分からないし……これ以上はやめておこう。
 それよりもセセラギの村の者だけが反乱? いや、ティオベルジェ……カリスオロの領主がいた。ってことは……そういう事だよな。
 でも、カリスオロとセセラギの者たちだけで国をどうにかできると思ってるのか?
 それとも……他に手を貸しているヤツが居るのか?
 その前に反乱を起こすかは分からない。せめて……話を聞ければ良かったんだがな。

 そう思いオレは荷馬車の隙間から外をみる。
 ふとメルナに視線を向けた。なぜかメルナが泣いている。

 やっぱりオレ何かしたのかもしれない。

 「メルナ、なんで泣いているんだ?」
 「だって……グランが私を睨むのですもの」

 それを聞きオレは、やらかしたと思った。

 「ごめん! あーいや、メルナを睨んだんじゃないんだ」
 「どういう事ですの?」
 「さっきの村でのことを考えてた。多分それで……そういう表情になってたのかもしれない」

 そうオレは弁明する。
 するとメルナは自分のハンカチで涙を拭った。

 「……そうでしたのね。ごめんなさい……私としたことが勘違いをしてしまいました」
 「いや、メルナは悪くない。それはそうと……ティオベルジェのことを聞かしてくれないか?」
 「ここじゃないと駄目でしょうか?」

 どうして、そう聞くんだ? 他のヤツに聞かれたくないってことなのか?
 メルナ……君はいったい。まさか本当に貴族で……それを隠してる。その可能性はあるな。だけど……それだけなら、ここで話しても問題ないと思うんだが。

 「ここで言えないことなのか?」
 「そうね……言えない訳ではないのですが。なるべくなら少し落ち着いて話をしたいのです」
 「そうか、分かった。じゃあ町に戻ったらにしよう」

 オレがそう言うとメルナは「ありがとう」と微笑んだ。
 それをみてオレは、メルナが余りにも可愛く思えて何も言えなくなった。