私はひたすら魔法陣が展開されていない所へと逃げていた。

 なんてことをしてしまったのでしょう。こんなに凄い魔法だなんて思わなかったのです。
 グラン……大丈夫でしょうか? 心配です。私のせいで危険に晒してしまいました。

 そう思っていると涙が溢れ出てくる。

 つらい……胸が痛いです。もっと魔法の知識を身に付けていれば……こんなことにはならなかったかもしれないわ。

 走りながら空を見上げた。

 ここには魔法陣がないですわ。

 ないことを確認した私は立ちどまりグランが居るだろう方をみる。

 「グランの姿がみえない。ですが恐らくあの辺ですよね?」

 そう言い私は手を組みグランの無事を祈った。

 ★♡★♡★

 「クソオォォー……中心に行くまでに死にそうだ!?」

 オレは降り注ぐ無数の氷柱を避けながら大きな魔法陣の中心へと向かっている。

 氷柱を避けきれない。ここにくるまで結構な数の氷柱にあたった。クッ……流石にキツイな。装備をしてなかったら間違いなく死んでるぞ。

 そう思いながら大剣を振り降り注ぐ氷柱を薙ぎ払っていった。それでも一部の氷柱がオレの体にあたる。

 あーイテェー……なんでオレがこんな目に遭わなきゃならない。……とはいえメルナを責められないよな。わざとやった訳じゃないし……。

 息を切らしオレは、ヤット大きな魔法陣の中心にくることができた。手をみると腕から伝い血が大量に付いている。

 「早く終わらせないと……オレが保たないぞ。これ……」

 そう言いオレは氷柱を避けながら大剣を上に翳した。

 「聖なる大剣 我、選ばれし者なり この声に応え展開されし魔法を無効かされたしっ!!」

 《グランドホーリーディセーブルっ!!》

 そう言い放つと大剣が激しく発光する。それと同時に大剣から光が放たれた。

 クッ……氷柱を避けながらだと……狙いが定まってない。だが……なんとか魔法陣にあたったみたいだ。

 大剣から放たれた光は魔法陣にあたり激しく発光する。

 ――ドッガアァァーンっ!!――

 途轍もない音が周囲に轟いた。それと同時に魔法陣が徐々に消えていく……。

 「やったのか……」

 それを確認するとオレは安心したせいか地面に膝をつき倒れ込んだ。

 メルナ……大丈夫だよな。

 そう思い地面に横たわりながらメルナが居るだろう方向をみる。

 こっちに向かってくるのは……メルナか?

 虚ろな目でオレは向かってくるメルナをみていた。

 ★♡★♡★

 とんでもない音と魔法陣が消えて来ていたため私はグランに何かあったのかと心配で駆けだす。

 「グラン……」

 大丈夫でしょうか? 早くグランの所に向かわなければ……。

 そう思い私は泣きながら走っている。
 グランのそばへ駆け寄った私は状況が最悪だと悟り、どうしたらいいか思考を巡らせた。

 このままじゃグランが死んじゃうわ。なんとか治療しなければ……何かありませんでしたでしょうか?

 そう考え私はグランが何か持っていなかったかバッグを探ってみる。

 「これは確か傷にいい薬草ですわ。あとは……」

 私は傷にいい薬草の他に体力回復ドリンクをみつけた。
 その後、応急処置として傷の酷い所に薬草を付着させる。

 ……男性の裸。えーっと……これは処置ですし……仕方ないことですよね。

 そう思い私は興奮しながらも耐え、グランの服を脱がせながら傷が酷い部位に薬草を貼っていった。

 体力回復ドリンクを飲ませませんと……。

 私はグランの口元に体力回復ドリンクを持っていき飲ませようとする。だが飲んでくれない……。

 どうしましょう……人を呼びに行くにもグランを一人ここに置いていくことになるわ。

 「これしかありませんよね……」

 体力回復ドリンクを口に含んだあと私は、グランへ口移しで飲ませる。

 グランが飲んでくれた。あーえっと……ただ口移しで飲ませただけなのに顔が熱いですわ。

 私はグランの顔をみながらしばらくボーっとしていた。

 ★♡★♡★

 「……」

 柔らかい唇の感触……もしかして……これってメルナなのか? メルナがオレに口移しで何か飲ませてくれた。
 体が楽になって来てる。ってことは体力回復ドリンクか。
 ……でも、なんで口移しで飲ませてくれたんだ? ただ単にオレが飲めなかったからか? 多分そうだろうな。
 でも……それだけでも嬉しい。キスとまではいかないがメルナの唇の感触が……。絶対この感触は忘れないぞ。

 そう思いオレは、メルナとのことを思い浮かべ妄想に浸っていた。