「おはよ、白川、腹へったぁ」
 クラスでも明るくて陽キャな黒田くん。
「おはよう黒田くん。今日も食べてこなかったの?」
「だからぁ、起きたばっかじゃ腹へらねえし。いつも教室に入ってきて、白川の顔を見たら腹へるんだって」
 僕の前の席に座ると黒田くんはすぐに体ごとふりむく。
「ぼ、僕はおいしくないよ」
「ハハッ、おもしろいなお前」
 こんな陽キャな黒田くんがこんな地味な僕に話しかけてくるようになったのは席替えをして黒田くんが僕の前の席になってからだ。
「おにぎり、食べる?」
「食う! やった!」
 僕はカバンからおにぎりを出して黒田くんに渡した。
 黒田くんは僕が作ったおにぎりを本当に嬉しそうにおいしそうに食べてくれるんだ。
 その姿を見ていると僕もなんだか嬉しくなる。
「お! なんだよ二人しておにぎり食って。うまそうだな」
 珍しく早く来たのか、赤星くんが教室に入ってきて僕たちに近づいてきた。
「なんだよ赤星」
「おはよう、赤星くん」
 赤星くんも黒田くんと同じ陽キャで明るくて楽しい人だ。
「おはよ。俺も腹へってきたぁ」
 僕たちを見て赤星くんがお腹を押さえていた。
「あの、おにぎりまだあるけど、赤星くんも食べる?」
 僕はカバンからもうひとつおにぎりを取り出した。
「マジで!? 白川マジ神じゃん! 食う!」
 僕は赤星くんにおにぎりを渡した。
「ありがとうな白川」
「うん」
 ラップを外し、赤星くんはすぐにおにぎりにかじりついていた。
「うわ、なんだこれ、うめぇ!」
「よかったぁ。ありがとう」
 赤星くんにもおいしいって言ってもらえるなんて、本当に嬉しいよ僕。
 あれ?
 なんだか黒田くんの様子がおかしい。
 ちょっと怖い顔で赤星くんを見てるんだ。
 どうしちゃったのかな、黒田くん。