「おはよ」
「あ、おはよう黒田くん」
　俺に向けられる白川の笑顔がまぶしい。
　今日もかわいいな白川。
「おにぎり、食べる？」
　やべぇ。
　おにぎり欲しいと思われてる。
　思わず白川を見つめてしまっていたからだ。
「いいのか？」
　席についた俺におにぎりを差し出す白川。
「これでよかったら」
　俺はおにぎりを受け取った。
「サンキュー」
　ラップに包まれたおにぎり。
　俺はしばらくそのおにぎりを眺めていた。
　白川にもらったおにぎり。
　白川が俺にくれたおにぎり。
　白川が俺のために。
「あれ、もしかして黒田くん鮭嫌いだった？」
「え？」
　白川が俺を見つめている。
「これ、鮭が入ってんだ」
「そう」
　いやいや、中に何が入ってるか見えねえし。
　ほんっとうに天然でかわいいやつだな、白川は。
「俺、鮭大好き！　一番好き！」
　思ったより大きな声が出てしまっていた。
「あはっ。黒田くんそんなに鮭好きなんだね。ふふ」
　しまった。
　白川に笑われてしまった。
　恥ずかしいな俺。
「おう。いただきます」
　ラップを開いておにぎりを口の中に入れた。
「なんだこれ！　うまい！」
「本当に？　よかったぁ」
　嬉しそうに笑う白川。
　ああ、朝から幸せだ。
　毎朝この笑顔が見れるなんて夢にも思わなかった。
　それもこれも、席替えをして白川の前の席になったからだ。
　ありがとう席替え。
「黒田くんは朝ご飯食べてなかったの？」
　一瞬で食べ終えた俺を見つめている白川。
　白川はまだおにぎりを食べている。
「ああ、起きたばっかりじゃ腹へらないんだよな。ちょうど今腹へってきたところ」
　口もちっこいよな。
　とにかく全部がかわいい。
　あー、好きだ。
　好きだ、白川。
「僕もだよ」
「は！？」
　身をのり出した俺を見て驚いた顔をする白川。
「え？」
「あ、いや、だよな」
「うん。僕も朝はバタバタして食べる時間ないんだよね。こうやって早く来て教室で食べるおにぎりが一番おいしいんだ」
「わかる。うまかった。ごちそうさま」
「うん」
　あーびびった。
　『僕も』って言われた時は思わず勘違いするところだった。
　まだドキドキしてる。
　誰か俺の心臓を落ち着かせてくれ。