「えっと……綾斗、お風呂ありがとう……」
「う……うん」
会話がこれ以上進まないっ!
「えっと、空夜……その口元の……傷どうしたの?」
「…………聞く?」
「空夜がいいなら……」
「じゃあ綾斗聞いてよ。俺のこの傷はさ、ずっと前。小学校1年生かな、の時にある人につけられたんだ。ほらだから小学校も今も、ずっとマスクつけてるでしょ?目立つの嫌だから」
ある人……小学生……?
「ある人って……」
そこまで言って気が付いた。ある人っていうのは……
「俺の父親だよ」
「前、言ってたもんね……」
「そう、だよ。まぁもう今はいないけどね」
へ……?
「死んだから。そして母親もいない。誰にも言わなかったけど、父親がさ、死んだ理由ってさ、母親が殺したんだよね」
「え……?」
「母親も自分のために。父親は俺と母親に暴力振るってたから」
そして、空夜のお母さんが、お父さんを殺したってこと?
「……」
「だから、この傷は暴力を受けたときに深く残った傷」
「……深く……」
「ナイフで切られたからね~」
「ナイフ……?」
「ねぇ、それより、綾斗。聞きたいことがあったんじゃないの?」
そうだった。
女子のシャツを見てもどうも思わなかったのに対して、なんで空夜には感じたのか。
「え、っとね。女子を見てもどうとも思わなかった」
「うん」
「そして、空夜は、恥ずかしいと思った」
「ふぃ~」
ふぃ~って何???
「どう思う?」
「ん~人の感性によると思うしな~、あっ!じゃあさ、俺と試しに付き合ってみる?わかるかもよ?」
空夜と付き合う?
「それ、空夜はいいの?」
「もちろん!」
「じゃあ、お試しで付き合ってもいいかな?」
「いいよ。綾斗」