「ふわぁ……」
学校への登校中。僕は眠気をこらえきれずあくびをする。
そこに
「おっはよ~綾斗っ」
とそこに、茶色い髪を半分にくくった幼馴染の花城道(はなぎみち)ことがやってきた。
「……ん。ふわぁ……」
「寝てないのか?」
後ろから声をかけられて、僕はドキッとした。
「ん。空夜もいたの?」
「いや。今2人がいるの見えて追いかけた。」
「そうなんだ」
「で?何やってたの?私、気になるなぁ~」
ん……ことだけには言いたくないな……
「俺知ってるよ?」
「空夜っ!教えないでよっ!?」
空夜はいつもつけているマスク越しにニヤッと笑って
「どうしよっかな?」
「……どうしようもない。教えるなよ。」
絶対に、知られたらやばい……ぼこぼこにされる。言えない……絶対に言えない。
「はいはい。言わないよ。まぁ、綾斗といったらあれしかないけどね」
「あれって何っ!?」
「秘密」
「綾斗のケチっ!」
「ケチじゃないよ。ほらもう学校始まるよ」
「あからさまに、話逸らしたね。どう思う?空夜」
「……まぁ、綾斗の自由だ。」

クラスに入ると、隣の席の柳原凪(やなぎはらなぎ)が机に突っ伏して寝ていた。
「柳原さん。朝だよ?」
「んにゃ……?おはよう?美空くん」
そういって、顔をあげた柳原さんは
胸元のリボンを外して、第3ボタンまで開けていた。ちらっと何かが見えている。
……これを見ている僕は、変態でしょうか……?でも、あまりときめかないな。じゃなくてっ!法的問題っ!そう思って、真っ赤になった顔を後ろに向けて柳原さんに言った
「柳っ原さん……あのっ……ボタン閉めてくれませんかっ!?」
「ん……?あぁこれ、寝るのに邪魔だったから」
「そういうことじゃなくてっ!」
叫んだ。そうして、クラスのみんなの視線が僕に集まった。
男子は、
「わぁお」
と言って、柳原さんの方を見ている。さすがにやばいよね……どうすれば……
「や、柳原さんっボタン閉めてっ!校則っ!」
「んぁ……そうだけ」
と言って、ボタンを閉め始めた。よかった……
「柳原さん。次からしっかり閉めといてくださいよっ!?」
「ん……覚えてたら」
「覚えててくださいよっ!」
なんか、今ので眠気がすべて吹っ飛んだような……

放課後

「で……?綾斗?見てないでしょうね?」
「…………なんのこと?」
「柳原さんよ」
「……見て……ないよ?」
見たよ。本当は。でも……何も思わなかった。
「何か思わなかったの?大きかったよっ!?私もあれくらい大きかったらなぁ……」
「それ、なんで男子の前で言うの?僕、男子だよ?」
「まぁ……綾斗だから、いいの。」
どういう意味ですかっ!?僕は男子と認定されてないんですか???
「まぁいいや。見たんでしょ?で、何も思わなかったの?」
「……なんでわかったの?」
「しいて言うなら、長年の付き合い、かなっ!」
長年の、付き合い……か
「……そう。じゃあ僕帰るね。やることあるから」
「ふぅん」
「じゃあ」
僕は、なんで何も思わなかったんだろう。