朝からマナがフニャってない。
 これは珍しいことなのだが、シャキッと元気なわけでもなかった。ため息が大きい。

「にゃーうー」
「コタロウいい子だね、ありがと」

 足首にスリスリとしてやったら、力なく笑われた。重症だ。

「今、お店の空気悪くてさ」
「ふみゅう」
「アライさんとワタリさん、前のことで注意されてから私にツンケンするの。今日店長に面談申し込んだらしくて。辞めるのかなあ」

 愚痴をぶちぶち言いながら化粧する。俺は横に座って聞いてやった。

「辞めるのはいいんだよ。とっとと辞めてくれてかまわないけど、なんかね」

 何がどうなのかわからないが、嫌な感じなんだな。まあ人間だって動物だ。そういう勘は大事だろう。

「やーだなー。行きたくないなー。私も猫ならよかった。コタロウとムギュってして寝てたい」

 それは――そうさせてやりたいが、無理な話だ。

 だって、マナは人間だからな。