「ただ、いま……」

 休日出勤から帰ったマナはどんよりしていた。大丈夫か。

「にゃう」
「うん。もーやだ、お風呂ためる」

 そう言って風呂場に向かう。すぐにザアッと水音がし始めた。疲れた時にマナはお湯にどっぷりつかるが、何がいいんだか。

「まいったよー。休んだ子たちさ、あれ仮病だった、たぶん」

 けびょう。なんだそりゃ。マナは上着を脱ぎ、買ってきたビールを冷蔵庫に突っ込んだ。たまに「ちょっと高いヤツ」と言って大事に飲む缶の色。

「夕方上がりの人が彼女らのインスタ見たらさあ、ヌン活写真あげてやんの。予約取れない店」

 何を言ってるか俺にはわからないが、イラッとしているのは伝わった。

「スタッフみんな騒いじゃって。午後店長いなかったから、この問題は私が預かることになっちゃって」

 ぐあああ、とため息をついてマナはフラフラ風呂に行った。うん、さっさとリラックスしてこい。

「にゃ」

 しまった。俺のご飯を出してもらってからの方がよかったな……こういう時は長風呂だから。
 しくじった。だが仕方ない、てきとうに待つ。まあ、俺は猫だし、待てるよ。

 バシャ、と音がし、マナがあがる気配がした。そこで「あっ」と声がする。なんだなんだ。
 しばらくして顔を出したマナは裸だった。

「着替え、持ってくるの忘れたー!」

 ぷんぷんしながら出てくるが、どうせ俺しかいないんだし裸でいいだろ。

「みゃあう」
「ひゃはん、コタ、やめれ」

 スウェットを着たマナのお腹に俺はもぐりこもうとする。ゲラゲラ笑われた。
 風呂上がりでホカホカのマナはあたたかく、いい匂いで好きだ。
 俺はマナの腹に爪を立てないようにしながら、胸元に顔を出す。

「にゃ」
「何ようコタ。えっちぃな」

 言いながらマナはニヤニヤ嬉しそうだ。ふん、おまえもえっちか。
 いいだろ、裸の付き合いでも。俺だって服なんか着てない。

 だって、俺は猫だからな。