「周囲はみんなカップルばっかり。その状況で『今日のチョコレートパフェは俺の気持ちだから』って台詞決めて。で、お前はそのときどういう態度だったか覚えてる?」

 雅人の声が怒りで震えている。

「え、あの、俺、ちゃんとお礼を言った、よね?」
「うん。『ごちそーさま、友達同士でこういうのもいいよね。今度は俺がおごるわ』ってケロっとした顔で言っただろ!」

 えっと……そんなこと言ったっけ?

「……言ったっけ?」
「言ったんだよ!」

 雅人が悔しげに吐き捨てた。

「俺はさ、これからは勉強しなくちゃならないし、陸也とは進路が別々になるし、だからお互いの関係、とか立ち位置をはっきりさせておきたかったんだよ。だから、勇気を振り絞って自分の気持ちを伝えたのに……なのにお前が、これからも友達だって、言った、から……」

 怒りの声に、湿っぽい吐息が混じる。嗚咽をこらえるような。

 俺は呆然としていた。
 なんてことだ。俺、なんて鈍感だったんだ。
 あのときはまだ、雅人と特別な関係になりたいって自覚できてなかったんだ。雅人がそんなことを考えてくれてるって、思いもよらなかったんだ。

「いや、あの。俺、あの時まだそういう自覚っていうか……心構えっていうか、そういうのがなくって……全然わかってなくって……」

 しどろもどろになって言い訳する。

「なのに……なのに、俺が『勉強するからもう一緒には帰れない』って突き放したとたんに、裏切られた、みたいな顔しやがって! その後あきらかに元気なくなるし、顔色悪くなって痩せていくし、ああもう俺はどうすりゃいいんだよ!!」

 雅人は苛立ちをスマホに叩きつけた。