夏祭りから帰宅後、冬夜は風呂を済ませ自室へと戻るとベッドに腰掛けた。
数時間のデートであったが、やけに濃い体験をしたような、だけどとても充実した時間だったと冬夜は今日あったことに思いを馳せた。
ぽわぽわと浮かれつつもスマホに目をやればある事を思い出し、慌てて春斗に文章で連絡を取る。
『そういえば画像は消したのか?』
花火が打ち上がったことで有耶無耶にされていた件がどうなったのかを問えば、数分経ってから春斗から返事が返ってくる。
『覚えてたか笑』
「(こ、こいつ……どさくさに紛れて〜っ)」
少しの憤りを感じた冬夜だったが、深呼吸し心を落ち着かせ改めて画像を見直すことにする。
不意打ちで撮られた画像はやはり間の抜けた顔で、嫌気が差したが動画を観ていなかったことに気づく。
再生を押してみれば、スマホを取り出している自分の姿が映り始める。
「(ついムキになってしまったな……)」
子どものように対抗意識を燃やしている自分に羞恥を覚えつつも動画を観ていると無邪気に笑う春斗が映り、反射的に指が動き停止させた。
指でその場面まで戻すと冬夜はじっとそれに目を落とす。
冬夜から逃れようとスマホを動かしたときにたまたま撮れたのだろう。
春斗のその顔を眺めていれば冬夜はなんだか全てのことがどうでも良くなってきていた。
「……」
瞳を閉じて冬夜は自身と葛藤するが、やはり春斗のたまたま映った笑顔が頭から離れず、誘惑に負けた。
春斗にメッセージを送る。
『やっぱり消さなくていい』
『え?いいの?』
『ああ』
『やりー!ありがとな!』
文字とともに感謝のスタンプが送られたのを既読すると、冬夜は画像フォルダを開いた。
指で操作し、スマホを構えている春斗の画像を表示する。
無言で見つめてから画面を消すと、自然と笑みがこぼれた。
「(写真も悪くないな)」
そっとそう思い、スマホを枕の横に置くと冬夜は寝床に入った。