恋ソング

 いよいよ退院の日。最後に話す時間をとってもらうことができた。本当に最後だと思うと、クリスマスが近いということもあって、「月が綺麗だって」という歌を聞きたくなる。
「桜川さん。私、一目見た時からずっと桜川さんのことが好きでした。でも、同性の人を好きになるなんて、気持ち悪いですよね。」
「まず、好きになってくれてありがとう。私は、同性の人を好きなることはおかしいとは思わない。それに、偏見も持っていないから大丈夫だよ。」
あ、そうだったんだ。私だけだった、同性愛に偏見を持っていたのは。どこかで聞いたことのある曲が頭の中でくりかえされる。フラットが沢山ついていそうな曲だ。
「でも、七瀬さんの気持ちには応えられないかな。」
私の中で不協和音のような音が響いた。桜川さんの反応は分かっていたことだ。それなのに、どうしても受け止めることができない。気がつけば、涙が頬を伝っていた。もうこれから先、会えないということ。私の気持ちには答えられないと言われたこと。今までに体験したことのない悲しみが私を襲った。不協和音が流れ続ける。めちゃくちゃなメロディーだ。今年の冬の一小節は失恋の味がした。