あなたが自分で名乗ってくれたなら、私も名前を呼びましょう。
私だってあなたを葉空ヨリとか、青春小説家とか、Aさんとは呼びたくなかったの。
小田切明日葉ちゃん。
あなたの名前が私は大好きだったから。
私の大切な幼なじみで、大切な親友。
――そして、私を殺した人。
私と明日葉の出会いはゼロ歳までさかのぼります。
私は明日葉がお腹の中にいる頃から、お友達になるんだよ、と母によく聞かされていました。もちろん私も赤ちゃんだったから記憶はないんですけどね。
母親同士が友人で、子供が同齢で同性。
そして学区的に、中学まで同じ学校だと確定していましたから、親が仲良くさせたがるのは当然のことでした。
私の母は幼なじみというものに憧れがあるようで、
「あなたたちは姉妹のようなものだから。お互いを大切にしなさいよ。一生ものの友人だから」と言い聞かせられて育ったのです。
それは明日葉も同じだったようで、私たちは幼稚園も小学校も中学校も一緒にいました。
関係が変わったのは高校の頃です。
本当なら私たちは別の高校に通う予定でした。
ですが、私が受験に失敗したことで明日葉の高校に入学することになりました。
あのときの明日葉の顔を忘れられません。
彼女は「いつまでも穂乃花と一緒にいたくない。姉妹のような関係が苦しい」と言いました。
私たちは長い時間を経て、家族になってしまっていたのです。
私たちは三年までクラスも別でしたし、登下校を共にすることがなく、学校での関係はほとんどないと言ったも同然です。
たまに家族同士で遊ぶことはありましたが、思春期の親戚付き合いのようで気恥ずかしい関係だったのを覚えています。
私たちは他人なのに家族のようになってしまっているんだなあとなんだかおもしろくなったものです。
あまり会話がなくなっても、大切に思うのが家族ではないでしょうか。
少しばかり明日葉と疎遠になりましたが、それでも明日葉を大切に思う気持ちは変わっていませんでしたし、それは明日葉も同じだと信じていました。
私たちは共に三年二組となりました。
明日葉の気持ちを汲んで、私は明日葉から離れてSさん、Cさん、Aさんと親しくなりました。
明日葉とCさんは一年から同じクラスで、Cさんは明日葉を「玩具」と呼びました。
それがどういう意味なのか知るのはクラスが始まって数日のことです。
私がいじめられた理由は明確だと言いました。
一つは、Mくんと付き合っていたこと。
もう一つは、明日葉を助けたこと。
彼女たちに無視をされても、悪口を言われても、暴力を振るわれても。Aくんに二股をかけられても、他の男子に襲われそうになっても。
私には唯一の存在がいたから。
明日葉がいてくれたから。
それなのに。明日葉は私を裏切った。
私を殺したのは、最後に私の背中を押したのは、小田切明日葉。あなたです。
私だってあなたを葉空ヨリとか、青春小説家とか、Aさんとは呼びたくなかったの。
小田切明日葉ちゃん。
あなたの名前が私は大好きだったから。
私の大切な幼なじみで、大切な親友。
――そして、私を殺した人。
私と明日葉の出会いはゼロ歳までさかのぼります。
私は明日葉がお腹の中にいる頃から、お友達になるんだよ、と母によく聞かされていました。もちろん私も赤ちゃんだったから記憶はないんですけどね。
母親同士が友人で、子供が同齢で同性。
そして学区的に、中学まで同じ学校だと確定していましたから、親が仲良くさせたがるのは当然のことでした。
私の母は幼なじみというものに憧れがあるようで、
「あなたたちは姉妹のようなものだから。お互いを大切にしなさいよ。一生ものの友人だから」と言い聞かせられて育ったのです。
それは明日葉も同じだったようで、私たちは幼稚園も小学校も中学校も一緒にいました。
関係が変わったのは高校の頃です。
本当なら私たちは別の高校に通う予定でした。
ですが、私が受験に失敗したことで明日葉の高校に入学することになりました。
あのときの明日葉の顔を忘れられません。
彼女は「いつまでも穂乃花と一緒にいたくない。姉妹のような関係が苦しい」と言いました。
私たちは長い時間を経て、家族になってしまっていたのです。
私たちは三年までクラスも別でしたし、登下校を共にすることがなく、学校での関係はほとんどないと言ったも同然です。
たまに家族同士で遊ぶことはありましたが、思春期の親戚付き合いのようで気恥ずかしい関係だったのを覚えています。
私たちは他人なのに家族のようになってしまっているんだなあとなんだかおもしろくなったものです。
あまり会話がなくなっても、大切に思うのが家族ではないでしょうか。
少しばかり明日葉と疎遠になりましたが、それでも明日葉を大切に思う気持ちは変わっていませんでしたし、それは明日葉も同じだと信じていました。
私たちは共に三年二組となりました。
明日葉の気持ちを汲んで、私は明日葉から離れてSさん、Cさん、Aさんと親しくなりました。
明日葉とCさんは一年から同じクラスで、Cさんは明日葉を「玩具」と呼びました。
それがどういう意味なのか知るのはクラスが始まって数日のことです。
私がいじめられた理由は明確だと言いました。
一つは、Mくんと付き合っていたこと。
もう一つは、明日葉を助けたこと。
彼女たちに無視をされても、悪口を言われても、暴力を振るわれても。Aくんに二股をかけられても、他の男子に襲われそうになっても。
私には唯一の存在がいたから。
明日葉がいてくれたから。
それなのに。明日葉は私を裏切った。
私を殺したのは、最後に私の背中を押したのは、小田切明日葉。あなたです。