「ははっ。やはり優花殿は愉快だ」

「愉快なのは、この遊びじゃなくて?」

 別に私が何か面白いことをしていたわけではないと思うのだけれど。

「この遊びも愉快だが私の頭を迷いなく叩く優花殿は愉快極まりないぞ」

 __頭?
 そこでハッとする。

「あ! ごめん!」

 そうだ。この人は皇子だった。自分だってそう呼んでいるのに、忘れていたとは何てバカなのだろう。皇子というアダ名ではなく身分なのに、頭を叩くなんて畏れ多すぎる。全身から変な汗が噴き出してくる。だけど皇子は嬉しそうに笑っている。

「皆は、私を敬ってくれる。されどそれは、とても寂しいことだ」

「寂しい?」

「このように共に遊ぶことも笑うこともない」

 衣ずれの音が静かな部屋に響く。そして私の頭に優しい温もりが触れる。