ポカンと口を半開きにして固まっていた皇子の顔が動き出す。

「ははは」

 そして、盛大に声を出して笑い出した。

「優花殿は素早いのう」

「皇子が遅いだけ! もっと素早く被らないと! 次行くよ!」

 それから数回繰り返すと皇子も慣れてきたのか、だんだん動きも素早くなってきた。

「ほい!」

「よっ!」

 だけどまだ一度も私の頭を叩けていない。
 ハエ叩きを振り上げては下ろす動作すら優雅で何だか笑ってしまう。