「……十日」

 朝起きるといつもの日課である木簡に正の字を彫る。飛鳥時代にも紙は存在しているらしいが高価な物のようで、皇子も何かと木簡を使用している。
 私は木簡を眺めながら冷たくなった手先を着ていた服の袖に隠す。この時代の暖房器具は火しかない。ストーブで育った私からしたら、雨風は凌げても寒さには適わない。夜には一層冷え込みガタガタと震えてしまうぐらいだ。