「……はぁ」

 大きく息を吐き出し、そっと目を閉じると眠気が思考を拐っていく。だけど瞼の裏には未来にいる家族やクラスメイト。そして浜田に麻美の顔が浮んだ。きっと、みんな心配してる。だから早く帰らないと。目尻から零れ落ちる雫の温もりを感じながら、ふと皇子が白い着物の裾で涙を拭ってくれたことを思い出す。
 __あの着物を汚してしまったかもしれない。
 ならば、明日謝ろう。私がまだ、この世界に存在していたならの話だけれど。