美人で頭も良く誰とでも仲良くなれる麻美。一体、何が楽しくて外見も学力も平凡な私の隣にいるのだろう。 クラスで孤立している私を哀れんでいるのだろうか。同情しているのだろうか。
 どんどん卑屈になっていく自分の脳裏に、ふと最初に出会った頃の麻美の声が響く。

“__何か、惹かれて。声かけちゃった”

  何一つ、そう思ってもらえるような要素はない。なのに、あの時の麻美の瞳には嘘がなかった。そうわかりながらも自分の卑屈さによって親友を疑っては自己嫌悪に陥るというループに嵌まる。

「フードもかぶってよ」

  私に兎の耳のついたフードを被せると「可愛いー」と無邪気な笑顔を浮かべている。

 だから、丸い尻尾を揺らすように歩いて見せると「兎がいるー!」と、喜んでいる。 麻美が笑ってくれると私も嬉しい。なのにいつも気を遣わせてしまっている。

「……ごめん」

「え?」

  小さ過ぎて聞こえなかったのか、首を傾げる麻美に私は「何でもない」と首を横に振る。 「あと、もう少しだね」と、励ましてくれる麻美と一緒に歩く道のりは何だか今日は長く感じた。