食事を終えると私は皇子に誘われ縁側で一緒に夜空を眺めた。令和の時代よりも月や星の輝きが鮮明に見えるのは光を邪魔する街灯がないからだろうか。部屋の中も微かな火だけを頼りにしている。電灯がある時代に生まれた私からしたら火など燃やした所で薄暗く意味があるのかわからない。

「今宵は朧月だ」

 そっと陶器のような白い指で、ふんわりと滲む黄色い月を示す。そして「兎はいるかのう」と、笑っている。その笑顔こそが、まるで朧月のように優しく、消えてしまいそうに儚い。

「いるかもしれないね」と、返したのは皇子のメルヘンワールドを口に出して壊す程に私は非道ではないから。