「いただきます」

 パクパクと食べ始める皇子の横で手を合わせると私は親しみのある器を持ち上げる。よく見ると全てのおかずが黒光りした漆器に盛られている。正直、この時代からあったなんて驚きだ。

「これ。漆器だよね?」

「そうだ。優花殿は詳しいのだな」

 詳しいもなにも、私の住んでいる和歌山県の伝統工芸品の一つに紀州漆器がある。だから漆器は小さい頃から親しみのあるものだ。

「早く食べ」

「あ、うん」

 いつまでも眺めていたい気持ちを抑え、私は漆器にこんもりと盛られたご飯を頬張る。