「どうか。この私を、ジジョにしてくださいませ」

 視線から逃れるように頭を下げる。
 __絶対に痛いヤツだと思われてる!もう!失敗したらどうするのよ!
 
「……な、何という」

 心の中で皇子に文句を言いながらゆっくりと顔を上げる。案の定、女性達は絶句していた。その気持ちは私が一番よくわかる。月から落ちてきた兎?恩返し?そんなことを言ってしまう自分に絶句している。

「わざわざ、月から来てくれたのだな~」と、呑気な皇子に「はい」と、頷く。

(つゆ)。この兎に馳走を振る舞ってやれ」

「か、かしこまりました」

 露と呼ばれた女性人は後の二人を引き連れて部屋を出ていく。

「これで、一安心だな」

 途端に、元のテンポで話し出す皇子はしっかりと目も定まっている。

「……何が一安心よ。後から何を言われることか」

「それはない。私の申すことは必ずだ。背くものなどおらぬ」

 その瞳が真っ直ぐ私を見つめる。
 そりゃあ、皇子だもの。偉い人なのはわかるけれど兎の化身っていうのは無理があるのではないだろうか。と、まだ疑心暗鬼な私はふと疑問を口にする。