驚愕の事実に口をパクパクさせている私を見て青年、いや皇子は首を傾げる。確かにそう言われてみたら気品があって気高いオーラは出ているけれど。

「……な、中大兄皇子は生きてるの?」

「生きておる」

 中大兄皇子に蘇我氏滅亡。
 そして、あの女性達の服装。

「優花殿は帰ると言ったが紀伊国に帰るのか? 今から、おなご一人は危ない」

「……それが」

 __タイムスリップ。
 そんな言葉は皇子には伝わらない。そもそも本当にそんなことが起こるのかもわからない。

「何か、事情があるのか?」

「え?」

 皇子の白い着物の袖が頬にそっと優しく触れる。

「そんな、思い詰めた顔をして」

 どうやら私は泣いていたらしい。皇子の白い着物の裾が、どんどん濡れていく。