自分の知識の乏しさに泣きそうになりながら、数少ない頭の引き出しから別の人物を探しだく。

「……蘇我入鹿は?」

 そこで彼が反応を示す。

「蘇我入鹿はわかるの!?」と、一筋の希望に縋るように彼の顔を覗き込み。

「……入鹿はナカノオオエノミコと中臣鎌足殿が討った。蘇我氏は滅亡した」

 __滅亡。
 ここにきていつも同じことを繰り返す浜田に感謝することになるとは思わなかったが、入鹿を倒したのは確か中臣鎌足と中大兄皇子。
 バラバラになったピースがカチリとはまる。
 皇子は「ミコ」とも読む。先程、彼はナカノオオエノミコと言った。
 __ナカノオオエノオウジ。
 __中大兄皇子!
 そしてこの青年はアリマノミコと名乗った。ならば彼は……。
 __アリマノ皇子!?