私はそっと差し出す。あの日、私の涙を拭ってくれた白妙のような真っ白なハンカチを。

「す、すいません」

 受け取った彼は恥ずかしそうにハニカム。
 記憶がなくても魂はちゃんと覚えている。

「良かったら私が案内しますよ?」

 あなたの歴史が残った、この素晴らしい町を。

「お願いします」

 そして、二人笑い合う。
 あの日と同じように温かな夕日の中で。

「あの。アリマノさんって」

「有馬皇子です」

 きっと皇子ならこの二度目の出会いも天が起こした奇跡だと言うに違いない。だけど私は思う。
 __全ては、あなたが起こした奇跡だと。