「皇子。また明日ね」

 藤白坂を歩くのは辛いけれど避けるほうがもっと辛くて、気づくと私は毎日皇子のお墓に通っていた。そして藤白神社に立ち寄って、あの日に想いを馳せる。
 だけど、もう過去に戻ることはできなくて会いたい気持ちばかりが募る。

「……会いたいよ。有馬皇子」

 その瞬間、風が吹く。ソヨソヨとした優しい風が腰まで伸びたこの髪をそっと撫でる。