「こんにちは」

「こんにちは」

 すれ違い様に近所の人と挨拶を交わす。
 苔むした細長い墓碑には今日も花が手向けられていた。それは、皇子の歴史が大切に守り継がれている証拠。

「……皇子」

 そっと撫でると冷たくて固い感触が手からこの心に伝わる。皇子の守りたかったものを守ることができたよ。これからも守り続けていくから安心してね。
 そっと目を閉じ手を合わせると皇子の顔が皆の顔が浮かぶ。 寂しさが広がり意図も簡単にこの胸を蝕んでいくけれど、私は生きることを止めない。 小指に結ばれた約束。1400年前の約束がいつだって私を支えてくれる。