「坂口ー。私は感動した」

 廊下を歩いていると浜田が後を追ってくる。

「あんなに歴史嫌いな奴が……。先生は嬉しいぞ!」と、号泣する姿に苦笑する。

「有馬皇子のお陰ですよ」

「そうだったな。突然、有馬皇子ファンになったかと思うと今度はいきなり教育学部のある大学に行くとか言い出したもんな」

 高校二年のあの日から私は必死に勉強をした。周りは有馬皇子に取り憑かれたんじゃないかと心配をしていたけれど。

「どうなることかと思ったが、まさか本当に歴史の教師になって戻ってくるとは思わなかったな」

 天を仰ぐ浜田は沁々と呟く。
 それは誰よりも、私自身が一番驚いていることだ。