「突然、どうしたの?」

「有馬皇子に恋してるの」

「へ?」

 ポカーンと口を開ける麻美に苦笑していると私達を呼ぶ浜田の声が聞こえる。

「坂口ー!」

 遠くで手招きをする姿に懐かしさを覚えながら「はーい!」と、元気よく返事をする。こんな何気ない日常も今はとても尊いから。ちゃんと大切に向き合っていきたい。

「麻美」

「ん?」

 呼び止めると小首を傾げる姿に、そっと微笑む。

「友達になってくれてありがとう」

 いつ死んでもおかしくないあの世界で、いかに未来の自分がくだらないことを考えていたのかを知った。
 秀でた物を沢山持っている彼女が何もない私をどう思っているのかとか。本当は同情しているんじゃないかとか。友達という関係までをも疑っていた。
 だけど飛鳥時代にタイムスリップをして、急に別れが訪れたことで自分の本当の気持ちに気づいた。