“__兎の化身か?”
 心底、驚いた顔をした皇子を思い出す。
 いつも真っ直ぐに見つめてくれる、あの漆黒の瞳が好きだった。
 “__優花殿”
 いつも、そっと名前を呼んでくれるあの声が好きだった。
 “__誰よりも想っておる”
 優しいあの熱が好きだった。
 ううん。「だった」なんて過去にはしない。これからもずっとずっと好きだから。この想いだけは変わらないから。
 私を見つめている瞳に、もう光が宿ることはない。本当は、この場に突っ伏して大泣きしたいけれど信じているから今こうして立っていられる。
 そっと、小指に結ばれた赤い紐に触れると皇子の言葉が私を支えてくれる。
 __また、会おうね。