「そうだ。みなべ町に記念碑があるんだよ?」 と、麻美が微笑む。

「記念碑?」

「そう。有馬皇子結松記念碑っていうのが」

 __皇子の生きた歴史は、ちゃんと残っている。

「麻美。もう一首は?」

「家にあれば()に盛る飯を草枕 旅にしあれば椎の葉に盛る」
 
 ハッとする。椎の葉に盛られた一口のご飯。それは旅の途中だからだと舎人さんが言っていた。

「家にいれば器に盛って食べるご飯を、旅の途中だから椎の葉に盛って食べる」

 また訳す私に麻美は感心しながら嬉しそうに笑っている。だけど私の頭の中には皇子の言葉がグルグルと巡っている。

“__これは、私への供物か?”

「……きっと、違う」

「え?」

「今の訳はやっぱり違うと思う。椎の葉に盛られたご飯は仏様への供物だから」

 ポツリと呟いた私の言葉に麻美は首をかしげる。