「二首とも皇子が謀反の疑いで連れていかれる時に詠んだ歌だって伝わってるんだけど」

「それは、違うよ」

 真実は、この目がこの耳が知っている。

「皇子は謀反なんて起こしてない」

 最期まで真っ直ぐな人だった。最期まで……。頬に涙が伝う。

“__優花殿は奇跡”
 そう言ってくれた皇子は、もう遠い過去の人。1400年前の人を想って泣くなんて、きっと麻美もおかしいと思っているだろう。だけど私には、まだどこかで笑っている気がする。塩谷さんも舎人さんも。露さんも、時雨さんも、五月雨さんも。