未来に戻っても、私はもう前のようにただ藤白坂を歩くことはできない。通る度に皇子のことを皆のことを思い出しては悲しくなるだろう。だけどそれこそが、私と皆がこの時代で共に生きた証。
 歌の最後に自分の名前を書こうとしたけれど、それはやめた。私は想いを残したいのであって、この名が残ることは望んではいないから。

「……皇子」

 私達の想いと共に歌を抱き締めると大きな風が吹いた。落ち葉が舞う音が風のうねり声が耳元を通りすぎていく。
 反射的に閉じてしまった目を開けると、さっきとは違う光景に私は首を傾げる。