__なら!
 こんなことをして歴史が変わってしまってはいけないとわかりながらも、歌と一緒に託された皇子の筆を取り出す。懐にしまっていたせいか私の熱が移って温かい。だけどそれが皇子の熱のように感じて胸が苦しくなる。

 “__残したい想いがあるのだ”
 この身体がこの時代から消えてしまっても、この想いだけは皇子の歌と共にこの時代に残りますように……。
 そう願いを込めながら一枚何も書かれていない木簡に筆を走らせる。まだ、上手く詠めないけれど覚えたての字でこの想いを綴る。