塩谷さんと舎人さんの周りを刀を持った人達が囲んでいる。だけど、今の私には何もできない。 飛び込んで行きたい衝動を唇を噛みしめながらグッと抑える。そして無理矢理、暗い森の方へと足を動かす。
 __ここを進んだら、もう二度と会えない。
 その気持ちが私を引き止める。最後に一度だけ。その姿を目に焼き付けたくて振り返る。
 すると涙で滲んだ瞳に皇子の姿だけがハッキリと映る。暖簾の奥で微笑んでいる皇子に私は泣きながら頷く。
 __守るから。絶対守ってみせるから。
 そして大切な歌を抱き締めながら茶色の落ち葉で染まった地面を思いっきり蹴り上げた。