「誰よりも想っておる」

 もしも、ここが未来ならば両想いになれた皇子と二人でどこへだって行ける。
 だけど、今の私達は想い合っているからこそ別れなければならない。だから凜としたその姿を。柔らかいその笑顔を。この瞳にただ焼き付けることしかできない。
 1400年後の未来でも忘れないように。いつまでもいつまでも、この胸の中で生き続けるように。 私を抱きしめる皇子の手に力が籠る。その瞬間、どこからか叫び声が聞こえた。

「止まれ!!!」

 遠くから、バタバタと人が駆けてくる音がする。

「有馬皇子!  無謀の罪で処罰致す!」

 世界が色を無くす。離れていく熱に、もう戻れないと知る。輿が乱暴に揺れ、動きを止める。恐怖が全身を走る。