「皇子のことを友達だと言ったけれど、本当は友達よりもずっとずっと大切に思ってる」

「……優花殿」

「皇子のことが大好き。今まで出逢った人の誰よりも好き。これから沢山の人と出逢ったとしても、この気持ちは変わらない」

 その透き通った漆黒の瞳を見つめる。最後ぐらい私も真っ直ぐありたい。

「皇子のことが、本当に本当に大好き」

 その唇に、そっとこの想いを移す。
 自分がこんな気持ちになれるなんて思わなかった。こんなに輝いた日々があるなんて知らなかった。全部全部教えてくれたのは皇子だった。
 見開かれた瞳が、ゆっくりと細められる。嬉しそうに。幸せそうに。

「私も優花殿が好きだ」

「……皇子」

 はっきりと言葉を落とす姿に好きになってはいけないと、自分の運命に巻き込んではいけないと、そう言っていた皇子を思い出す。
 嬉しいはずなのに涙ばかり溢れるのは、その言葉が意味することを理解しているから。
 皇子は、もう自由になる。その立場からやっと解放される。