「優花殿、感謝する」

 皇子は微笑むと私の左手を柔く握る。そして懐から一本の赤い紐を取り出した。それは私があげた飴の袋を結んでいた紐。

「呪いだ」と、私の小指に結ぶ皇子の姿が涙で滲んでいく。
 __旅の無事を祈る呪い。

「私の魂は優花殿と共にある。必ずいつかまた逢える」

 そして、また逢う為の契り。
 私は皇子の胸の中に飛び込む。抱き止めてくれるその身体が抱き止められたこの身体が互いの存在を教えてくれる。
 ここにいる。傍にいる。だけど離れてしまった瞬間、この人は過去の人になる。遠い遠い過去の人。

「……私も皇子に嘘をついた」

「ウソ?」

「偽り」

 その鼓動に頬を寄せる。