「だから、この歌を守ってくれぬか?」

 その言葉に皇子の差し出した木簡を見つめる。この歌は1400年後の未来まで受け継がれる。

 __この歌を守ることが私の使命。

「私の歴史を守れるのは優花殿しかおらぬ。例えそれが悲劇の皇子と呼ばれようと幸せなこと。私のような者が1400年後の未来でも忘れ去られることなく、人々の心に生き続けることができるのだからな」

 私は、そのことを誰よりも知っている。毎日欠かすことなく手向けられる花。大事に守られ続けている歌。1400年後の未来で、私はちゃんと見ている。
 目の前にある漆黒の瞳を見つめると、あの日と同じ私の全てを飲み込んでしまいそう。