「未来で優花殿の友が父上が母上が待っておられる」

 麻美。お母さんとお父さん。皆大好き。皆大事。だけど……。

「私にとって、皇子だって大事な人だから。どちらかなんて選べない。もしそんなに私を未来に帰したいのなら皇子も一緒に行こう?」

 きっと当たり前だと思っていた未来の世界は、今は色褪せて見えてしまうだろう。この人と出会ってしまった今、この人のいない世界はただただ悲しいだけ。
 だけど皇子はそっと私の身体を引き離す。漆黒の瞳が真っ直ぐにこの心の奥までも見つめる。

「私は行けぬ」

「どうして?」

「これが私の運命だからだ」

「運命って!  なら私も残る!」

「それはならぬ」

 皇子は抵抗する私の両肩を掴むとこの瞳を見つめる。