皇子がこの頬を撫でる度、涙が散っていく。愛おしそうに触れる熱に苦しくなる。

「傍におるだけでいい。それだけで力になる。心とて安らぐ。共にいられる奇跡に、そして優花殿に誠感謝申し上げる」

 そっと微笑むその顔に胸がジリジリと焦げていく。涙が止まらない。幸せなのに胸が張り裂けそうに切なくて。

「優花殿。戻るのだ」

「戻るって、どこに?」

 私の戻る場所は難波宮。皇子だってさっき、戻ると……。そこで気づく。