「恐らく、孤独だった私を天が哀れに思ったのであろう」

 “__天は見ておられるのだな”
 初めて会った時、皇子がそう言った意味を知る。

「それ故、優花殿と会わせてくれたのだろう。優花殿には迷惑な話しだがな」

 そんなことない。と、首を横に振る私の頬を皇子は手の甲でそっと撫でてくれる。

「迷惑なんかじゃない。皇子に会えてよかった。幸せだよ」

 すると皇子は嬉しそうに笑ってくれる。

「優花殿は誠に奇跡だ」

 中大兄皇子に皇子は言った。
 本当の天を知っていると、天の奇跡を知っていると。
 だけどそれが私のことだなんて畏れ多い。

「ただ傍にいたかっただけ。これからも皇子の傍にいたいだけだよ」

 皇子を一人にさせたくないと言いながら、それは私が望んでいただけのこと。傍にいたい。ただそれだけ。

「何を申す。何時も私を救ってくれた。何時も力になってくれた」

「だって私、歴史も何も知らない。皇子のことを助ける術がない」

 中大兄皇子から皇子を守りたいのに何もできない。