「……私?」

「そうだ。空から、それも兎の化身が落ちてきたではないか。それ故、死ぬことも忘れてしまった」

 皇子はハハッと楽しそうに笑う。

「優花殿と過ごした日々は、私が生きてきた中で一番愉快だった。誠に幸せだった」

「……そんなこと言わないでよ」

 だった。なんて、過去形にしないで。

「これからも一緒にいよ? これからもそうやって幸せな日々を送ろう?」

 だけど皇子は頷いてはくれない。ただ優しく愛おしそうに私の頭を撫でる。

「優花殿? 私にはどうして優花殿が、この時代に来たのかわかるぞ?」

 __私が、ここに来た理由。
 それは皇子の命を救うためであって欲しい。だけどきっと違うと、どこかで気づいてしまった。