「時間を知るため……」

「ジカン?」 と、首を傾げる姿にギョッとする。彼は時計を知らない。そして時間もわからない。そうなると……。

「……刻?」

 確か昔、丑の刻とか「時」ではなく「刻」と言っていたと数少ない知識を活用する。

「おお。刻であるか」

 案の定、通じたらしい。
 やはり彼は昔の言葉しか理解できないようだ。

「チコクなら存じておるが」

「ち、遅刻?」

「漏刻だ。水の量で刻がわかるとか、ナカノオオエノミコが申しておった」

 み、水の量!? な、なんて原始的!
 言葉だけではなく生活様式すら何処ぞの時代に習っているなんて、彼は相当な歴史マニアなのだろうか。