「もう闇も深い。眠ったほうがよい」

 そう静かに囁く皇子の答えが見えてしまったように思う。だけど、気づかないふりをして目を閉じその鼓動に耳を傾ける。すると不思議なぐらいにこの心は静まる。けれど微睡む意識を手放さないのは、この瞬間をいつまでも感じていたかったから。この幸せを少しも余すことなく感じていたい。
 私は穏やかな鼓動を規則正しい呼吸を聞きながら、皇子が傍にいることをずっと確かめていた。