「……皇子は二人のことを大切に思ってるんだよ」

 死んで欲しくないから。生きていて欲しいから。だから逃げろと言っている。

「逃げませぬよ」

「そうですよ。逃げようなど思いませぬ」

 塩谷さんと舎人さんは、その背中を見つめながら言葉を落とす。

「私も逃げたくない」

 死にたくない。だけど逃げたくない。

「戻りましょう」

 舎人さんの言葉に頷く。
 時代も身分も違う私達だから、それぞれに違う想いを抱えている。でもその真ん中にある気持ちは同じ。
 塩谷さんも。舎人さんも。皇子のことが大好きなんだ。皇子の傍にいたいと思っているんだ。