「どうされました?」
「物部殿が呼んでおりますぞ?」と、少し後ろにいた舎人さんと塩谷さんが怪訝そうに近づいてくる。しかし皇子は振り返ることなく言った。
「逃げよ」
その言葉に二人が息を飲んだのがわかる。
__逃げろとはどういうこと?
「な、何を、申しておるのですか?」
「ご、ご冗談はよしてください」
塩谷さんと舎人さんの声が戸惑いで揺れている。だけど皇子の澄んだ瞳が二人を真っ直ぐに見つめる。
「機を見て逃げるのだ」
「な、何故ですか!?」
「有馬皇子様!」
声を上げる二人に背を向けると皇子は物部さんの元へと歩いて行ってしまう。凛としたその後ろ姿が涙で滲んで見えなくなる。
__もう用のない私達を中大兄皇子がどうするか。
皇子はその答えをわかっている。誰よりも。
「物部殿が呼んでおりますぞ?」と、少し後ろにいた舎人さんと塩谷さんが怪訝そうに近づいてくる。しかし皇子は振り返ることなく言った。
「逃げよ」
その言葉に二人が息を飲んだのがわかる。
__逃げろとはどういうこと?
「な、何を、申しておるのですか?」
「ご、ご冗談はよしてください」
塩谷さんと舎人さんの声が戸惑いで揺れている。だけど皇子の澄んだ瞳が二人を真っ直ぐに見つめる。
「機を見て逃げるのだ」
「な、何故ですか!?」
「有馬皇子様!」
声を上げる二人に背を向けると皇子は物部さんの元へと歩いて行ってしまう。凛としたその後ろ姿が涙で滲んで見えなくなる。
__もう用のない私達を中大兄皇子がどうするか。
皇子はその答えをわかっている。誰よりも。