「食べよ」

 柔い声に顔を上げると皇子の手には桃色の飴が二つ乗っている。

「これが最後だ」

 __最後。
 この飴がなくなったら夢から醒めてしまうかもしれない。躊躇っていると皇子は飴玉を日の光に翳す。

「世界が輝いて見えるぞ?」と、優しく微笑んだけれど私は知っている。

「飴なんて必要ない」

「え?」

 漆黒の瞳が私を見つめる。

「そこから覗かなくても私には輝いて見えるよ」

 楽しい時も、悲しい時も。いつだって、どんな時だって。

「皇子のいるこの世界は私にとっていつだって輝いて見える」

 この想いはなくならない。例え時が経とうと色褪せることはない。
 すると皇子は嬉しそうに優しく微笑む。