「お二人は中へ」

 物部さんに即され後ろ髪を引かれながら輿に乗る。

「元気な奴らだ」と、皇子は笑った。だけどその笑顔は泣いているように見える。

「幸せだ」

 ならどうして、そんな顔をするの?
 輿がゆっくりと動き出す。私は視線を外し簾の外を眺める皇子の背に、そっと額を寄せた。

「私も、幸せ」

 こんな死ぬかも知れない状況にいるのに不思議と恐怖よりも幸せを感じている。きっと今、私はさっきの皇子と同じ顔をしているだろう。でも、しょうがないんだ。泣きたくなるぐらい幸せなのだから。