「う、海綺麗だったね!」

「そうでございますね。見ていたら心が休まりました」

 当たり障りのない言葉に舎人さんが優しく微笑んでくれる。

「私はこの海よりも優花殿の方がお美しいと思いますよ?」と、塩谷さんはいつものようにニヤニヤと笑う。

「優花殿に近づくでない」

 皇子はムッとしながら私の手を引く。

「振られてしまいましたね。あーよしよし」

 そんな塩谷さんを舎人さんが慰めて、しまいに二人でじゃれ合う。皇子はその様子を呆れた顔で見ている。
 こんな穏やかな日が続けばいい。これからもずっと。