“__私への供物か?”
 どうして?。戻ろうって言ってくれたじゃない。と、泣きそうになるのを必至で堪える。 皇子はどこまでも悲しい未来を見ている。ならば、このまま時が止まればいい。そうしたら、そんな未来が訪れることもない。 皇子は米を飲み込むと一人で立ち上がり浜辺を歩く。その後を追いかけると「綺麗だな」と、笑って振り返る。 どこまでも澄んだ空の色がどこまでも鮮やかな海の色が、この目に滲みる。 「尊いな」 「……うん」 頷く私に皇子は深く微笑むと、懐から木簡を取り出す。そして、筆を握りながら海を見つめた。 その瞳は、この空のようにどこまでも澄んでいる。だけどどこまでも、寂しい色に見える。