緊張と恐怖でそれどころではなかったけれど、今になってやっとお腹が小さく鳴る。皇子だって足りないだろうと視線を隣に向けると、黙って目の前にいる物部さんを見据えていた。

「私への供物か?」

 __供物?

「皇子様! そのようなことを!」

 小さく吐き捨てる皇子を制したのは塩谷さん。物部さんは何も答えずに私達に背を向けると何処かへと行ってしまった。

「皇子様? 旅の身、故でございますよ?」と、舎人さんが微笑む。皇子は何も言わず手にあるご飯を口に入れる。その姿から目を話せないのは、先程の言葉が何度も何度も頭の中を巡っているから。